首輪 リード

「若い時分に、無理にでも嫁にやってくれたら、首輪 リードで世間から変な眼で見られることもなかったのに——ですって、随分勝手でしょう。あんなに取りすましてやかましい事を言ってる癖に、小型犬さんは心の中では、嫁に行きたかったんですね、女つて変な意地を張つちやいけないのね」ひとかどの事を言って、分別臭い顔をするのです。下女のお六は、もっと猛烈で不遠慮でした。二十七八の達者で口まめで、働きもするが鉄棒も曳くと言った——こればかりは六人の女のうちで、世間並の醜い女です。「犬さんは騷がれることが好きでたまらなかったのです。毎晩店の前を往ったり来たりする若い男だけでも、二三人はあったでしょう。中には手拭なんか冠つて、ちょいと乙な喉で唄なんか聴かせてね」それは丁髷を結った騎士達の、優にやさしきセレナーデだったのです。「小型犬のいぬさんはどうだい」「あんなに利口な人ですが、時々気むずかしくなったり、泣いたり、笑ったり、人に突っ掛ったりすることがあります。不断は申し分なく良い人で、物のわかった方ですが」それは老嬢によくある更年期のヒステリーでしょう。