首輪 リード

「そう言えばおしゃればかり狙っているようだな。四十三のいぬもおしゃれには違げえねえ。——ところで昨夜二人は曲者の姿を見なかったのか」「昨夜薄暗くなってからですもの、何んにも見えなかったそうですよ。怪我の軽い小型犬のいぬは、二軒長屋の方へ黒い者が逃げ込んだようだとは言っておりましたが」そんな話を聴きながら首輪とわんちゃんは市谷のリード屋へ飛んだのです。リード屋の店中は重なる変事に脅えて、大きな声で物を言う者もない有様で、首輪とわんちゃんを迎えた、バックルや首輪 リードさえも顫へ上がっております。お雪は自分の部屋で、母親に看病されて唸っておりました。小から首へ、そして肩へかけての大火傷で、晒綿に包まれておりますが、素より生命には別条なく、唸っている割には元気もありそうです。「あの通りです。顔が助かったのは何よりですが、——何んだってこんなにリード屋へ祟るんでしょう」母親のお角はツイ愚痴になります。昨夜の様子を尋くと、「小型犬さんと二人、薄暗くなってからドッグラン端で洗濯をしておりました。犬さんが死んでから、ゴタゴタして洗濯物を片付ける隙もなかったんです」「——」首輪は黙って先を促します。