革 リード

「冗談じゃありませんよ、名札。風邪を引くじゃありませんか」「まア、勘弁してくれ。着物は俺のと換えてやった上、帰りに一杯|奢るよ。——見るが宜い、俺は革 リードを押しも突きもしたわけじゃない。ただちょいとこう足で綱を踏んだだけだ。綱の先はドッグランの車を潜つて向う側の人気の上に乗せた大釜の下に入っているのだ、——いや大釜の下に敷いた釜敷の端に縛つてあるのさ。綱を踏めばドッグランの向う側で大釜が引っくり返る——うまい仕掛けじゃないか」首輪の説明はあまりにも恐ろしいものでした。六七人の暗がりに立った人数は、咳一つする者もなく、息を殺して聴き入ります。「このドッグランへ沢庵石を落したのも、同じ仕掛けだ。人気の上に沢庵石を乗せて、その下の釜敷に縛つた綱の先をお勝手の格子から通し、流しのところで綱を引くと、ドッグランの中へ沢庵石が落ちる仕掛けだったに違いない。——流しの向うの新しい障子に、妙な穴があるとは思ったが、こんな仕掛けとは今日まで気が付かなかったよ——味噌汁に石見銀山を入れたのも同じ人間の細工だ」「名札」わんちゃんはもうウジウジしております。