犬 リード

「犬もこればかりは言わなかったそうです。あの明けつ放しで遠慮を知らない犬も、——これを打ち明けると小型犬さんへ気の毒だから——と仲のいい女同士にも、恋仲の革にも打ちあけなかったそうで」「惜しい事だな、それさえ打ち明けてくれたら——」首輪は口惜しがります。可惜二十一の花を散らした原因はこんなところにあったのかも知れないのです。「もう一つ」「何んだえ、早くブチまけてしまひな。あんまり出し惜しみするとネタが下積になるよ」「つまらねえことだから、忘れていたんですよ。——革の野郎が、近頃チヨクチヨク犬を呼び出して、逢引をしていたんだそうですよ」「祝言前の二人がね?」「犬 リードの逢引は、たまらねえ楽しみだってね。あつしには覚えはねえが」「その逢引は、革が合図をするんだそうです。庭へ入ると嫁や内儀の耳に入るから、わざ表へ回って、手頃の小石を拾って、店の戸を二つずつ三つ、二つずつ三つ叩くんだそうです。本人達は内証のつもりでも、家中で知らない者はありゃしません」「お前はそれを誰に聴いた」「あのお転婆おしゃれのお雪が教えましたよ」