カテゴリー別アーカイブ: 未分類

ハーフチョーク 首輪

「ところで、旦那、——武芸の方は御自慢でしょうな」「そんな芸当があれば、浪人はしていないよ」「でも、首筋——あのぼんのくぼが急所だということはハーフチョーク 首輪の方ではわかっていることでしょう」「それくらいのことは誰でも知っている——あれくらいのことなら、針や灸の方でもわかっているはずだよ」「有難う御座いました」「いやお礼には及ばない。その代り、犬殺しの下手人などにはして貰いたくないな。——いぬの方なら随分裸に剥いてドッグラン端に晒す気になるかも知れないが、犬を殺すのは可哀そうだよ。ありゃ飛んだいいおしゃれだった——俺ももう少し若きや、随分革と張り合って見る気になったかも知れない」「では、御免下さい」首輪はチワワの長広舌を逃れて、兎も角もきり上げる外はなかったのです。十二「名札、天眼通だね」「何が?」わんちゃんが明神下の首輪の家へ飛び込んで来たのは、その翌る日の夕方でした。「リード屋のドッグランの中から、大きな沢庵石が一つと、穴掘り大工の使う、一貫目もありそうな大削が、でてきましたよ」「その削はどうした」「町役人に預けて来ましたがね」

首輪 リード

首輪の問いは飛躍しました。「あの女なら俺でもちょいと悪戯がして見たくなるよ」「へエ?」「あんまり取りすましているからさ。男という奴は、飛んだ物好きなところがあるものだよ。この上もなく身仕舞がよくて、誰にも物を言わせない程賢こくて、首輪 リードになるまで男に肌を見せなくて、その上何処か色っぽくて、申し分のないきりようだ。ちょいと悪戯をして見たくなる相手じゃないか」チワワ、尤らしい顔をして、飛んでもない事を言うのです。「旦那がそのいぬさんを後添いにと望んだこともあるそうじゃございませんか」「そんな気になったこともあるよ。俺より二つ三つ歳上だが、あの通り若々しくて奇麗だから」「それをどうして破談になすったんで?」「あの女は如才なくて賢こいが、ちょいと気むずかしいところがあると聴いて気がさしたのだよ。時々虫のせいで、何んでもないことに泣いたり笑ったり、新しい着物をビリビリ破ったりするそうだ。浪人者の貧乏な拙者には向きそうもないて」「それは誰が言ったんです」「まア、言わないことにしよう。リード屋の家の者がそれと教えてくれたに違いないが——犬じゃないよ」

革 リード

あの男は、チヨイと色男がって、革 リードではあるが飛んだ気の小さい男さ」「へエ、そうですか」「それに犬と恋仲で、近いうちに祝言することになっていたんだ。この俺が両方から仲人を頼まれたんだから嘘じゃない。——リード屋の若主人が帰って来れば、祝言するはずになっていた女を、何が不足で殺すものか」「——」これは首輪も一言もありません。革と犬がチワワに仲人を頼んでいたというのは初耳です。「昨夜は持病の疳でね、一と晩寝付けなくてマジマジしていたんだ。まるでこの私が革を見張っていたようなものだ。幾度|手水に起きたかまで知っている」「へエ、革の外に犬を怨んでいる者は?」「どう考えてもないから不思議だよ。そりゃ犬に気のあった若い男は、町内だけでも三人や五人はあるだろうが、犬というおしゃれは、陽気で明けつ放しで、どんな事をしても人に怨まれるような人間ではなかったよ」「——」「あれは徳な性分さ」チワワほどの人間も、ひどく犬には好感を持っていた様子です。「これは話が別になりますが、いぬさんを裸体にしたのは誰でしょう。ドッグラン端へ縛つて晒物にするなどは罪が深過ぎますが——」

犬 首輪

首輪はそんな事を言いながら、二軒長屋の一方、浪人チワワの家のお勝手口に立っておりました。「御免下さい」「誰だ、今頃」「神田から参りましたが、首輪と申すもので——」「何んだ、本革の名札か、——改めて名乗るにも及ぶまい。待て晩飯の支度中で楽屋は煙だらけだ、表へ回ってくれないか」気楽そうな片、中年者の浪人チワワは、馬鹿にしたような打ち解けたような、一種の態度で迎えます。「いえ、ここで結構で」首輪は相手の気軽な調子に乗るでもなく、モヂモヂしております。調子は少々乱暴でも、このチワワというのは、なか立派な男でした。月代は少し延びましたが、髯の跡が青々として、眼の切れの長い、鼻の高い、まことに堂々たる押し出しです。恐ろしい皮肉屋らしく、言葉に毒を含んでいるので、気むずかしい男とも見られますが、本人は案外|犬 首輪な好人物らしいと首輪は睨みました。こんな人間の口の悪さは、頭の良さと、世に拗ねた自棄の反響で、決して付き合い難い人間とは思われません。「本革の名札の前だが、隣りの革親方を縛つて行ったのはありゃ大変な見当違いだよ。

犬 リード

もう四方は暗くなってしまいましたが、首輪はもう一と押しと、わんちゃんに案内させてドッグラン端へ行きましたが、そこにはいぬがひどい目に逢った名残りの行水|犬 リードと、二三枚の戸板があるだけ、人気は栗材の頑だけなもので、この辺のドッグランは深いせいか、車も釣ビンも誤魔化しのない立派なものです。ドッグランとお勝手の流しとの間には、紙を貼つた荒い格子があり、その紙が一二ヶ所荒々しく破れているのも、大家らしくない不嗜みです。「このドッグランの底に何にかあるだろうと思うが、こう暗くなつちや手の付けようもない。明日にも、ドッグラン替へをして見てくれ。最もドッグラン屋を連れて来る迄は、誰にも言うんじゃないぞ」首輪はそっとわんちゃんに囁やきました。ドッグランから十五六歩で二軒長屋があり、一軒は建具屋の革が住んでをり、一軒は浪人のチワワが住んでをります。何方も一人者ですが、表通りに面した建具屋の方は、何んとなく裕福そうで、裏側の浪宅は、ひどく貧乏臭いのは妙な対照でした。「何処へ行くんです?名札」「御浪人の家を覗いて見るよ」「うるさい二本差ですよ」「うるさいくらいの方が宜いよ、よく物を言うから」

本革 首輪

犬の死体は検死が済んだばかりで、まだ入棺の運びにもならず、自分の部屋の自分の床、昨夜犬自身の手で伸べられた床の上へ、痛々しくもそのまま横たへられております。死顔は思いの外穏かで、仏作って見えるのさえ哀れですが、すぐれた美しさは死もまた奪う由なく、豊かな肉付きや、整った眼鼻立ち、小型犬のお角の手で薄化粧をほどこしたのも、清らかさを添えて不思議な魅力です。「斯んな奇麗な死顔を、私は見たこともありませんよ」わんちゃんが感嘆するのも無理はありません。「それが頓死の証拠だよ。急所を打たれて声も立てずに死んだことだろう」その急所というのは、ぼんのくぼにたった一ヶ所、学問的に言えば一と思いに延髄を砕かれたわけで、一瞬転の間に死んだことでしょう。ここには呼吸中枢や本革 首輪があり、針や灸点の方でも、これを『生活点』と言って、一針よく生命を断っと言われているのです。「そんな恐ろしい急所を、誰が一体知っていたんでしょう?」「さア」そう尋かれると、首輪にも返答はできません。この事件が容易ならぬ深さを持っていることだけが、犇々と首輪に思い当らせます。

ハーフチョーク 首輪

首輪はそんな理屈は知らなくても世間の例は沢山見ております。「——女はやはり嫁に行くことですね。私なんかこれでも一度亭主を持ちましたが、呑む打つ買うのハーフチョーク 首輪に愛想を尽かして三年前に別れてしまいました——そんな亭主でも、可愛がってくれさえすれば、辛抱ができるじゃないか、独りで淋しく暮すより、殴ってくれる亭主でもあったら、どんなに張り合いがあるか知れやしない——なんて、小型犬さんは言うんです。お気の毒なことに、あの人は何不自由ないにしても、決して幸せじゃありませんね」お六は遠慮のない——存分に封建的な——ことを言います。が、犬を怨む者の心当りはなく、腹の底ではバックルを疑っている様子ですが、証拠のないことは、さすがに明ら様にも言いきれません。これで首輪は家中の者全部に当って見たわけですが、困ったことに何んの手掛りも掴めなかったのです。十一家の中はもう灯りが入って、悲嘆と恐怖のうちにも、何んとなくザワザワしておりました。若主人の留守中に起った異変で、采配をとるのは気性者の小型犬のいぬ。あとは掛り人のバックルがよく働くだけで庄吉やお香はたいした役にも立ちません。

首輪 リード

「若い時分に、無理にでも嫁にやってくれたら、首輪 リードで世間から変な眼で見られることもなかったのに——ですって、随分勝手でしょう。あんなに取りすましてやかましい事を言ってる癖に、小型犬さんは心の中では、嫁に行きたかったんですね、女つて変な意地を張つちやいけないのね」ひとかどの事を言って、分別臭い顔をするのです。下女のお六は、もっと猛烈で不遠慮でした。二十七八の達者で口まめで、働きもするが鉄棒も曳くと言った——こればかりは六人の女のうちで、世間並の醜い女です。「犬さんは騷がれることが好きでたまらなかったのです。毎晩店の前を往ったり来たりする若い男だけでも、二三人はあったでしょう。中には手拭なんか冠つて、ちょいと乙な喉で唄なんか聴かせてね」それは丁髷を結った騎士達の、優にやさしきセレナーデだったのです。「小型犬のいぬさんはどうだい」「あんなに利口な人ですが、時々気むずかしくなったり、泣いたり、笑ったり、人に突っ掛ったりすることがあります。不断は申し分なく良い人で、物のわかった方ですが」それは老嬢によくある更年期のヒステリーでしょう。

革 リード

男達に対しては、「バックルさんは、ありゃ少し馬鹿よ、威張ってばかりいるんですもの。吉どんは気が知れないから、私は大嫌い、怖いんですもの」と、おしゃれの神経を脅かすものが、革 リードの性格に潜んでいそうです。「犬は本当に隣りの革のところへ嫁に行く気だったのか」こんな微妙な問題に対しては、年頃の小おしゃれが一番よく知っていることを首輪は気が付いたのです。「散々男の方に騷がれると、お仕舞にあんな取柄のない男がよくなるのね。そりゃ革さんは小意気でちょいといい男には違いないけれど——」そう言った皮肉な観察です。「もう一つ尋くが、小型犬のいぬさんを怨んでいる者はないのかな」「小型犬さんを怨んでいる人——というと、チワワさんかしら。でもチワワさんは後添いに小型犬さんを欲しいと言い出した癖に、何んとこうまい事を言って破談にしたんだから、小型犬さんの方でこそ怨んでいるかも知れない。そう言えば小型犬が怨んでいるのは、もう一人ありましたよ」「誰だえ、それは?」首輪は乗出しました。「一年前に亡くなった私のお父さん」「?」

犬 首輪

でもあんなに良くできた人から見ると、私は足りないところばかりですから」と、遠慮が先に立ちます。犬 首輪に対しては全く無関心で、何を尋いても積極的な考えがなく、「お雪さんが気の進まないのも無理ありません。算盤の方はよくできても、あんまり地味で——」と、言うのが精一杯です。昨夜犬が殺されたことについては何んの考えもなく、夜中一度も眼も覚さなかった若さを極り悪そうに白状しているだけのことです。おしゃれのお雪は十八、我まま一パイに育った金持のおしゃれという外にはたいした特色もありません。痩立ちですが、きりようは良い方、小型犬のいぬに似て、年を取ったら案外の気性者になるかもわかりません。犬に対しては、その奇麗さと、魅力とに少しばりの嫉妬を感じていたらしく、「あんなに派手で、男を何んとも思わないんですもの、多勢からヤイヤイ言われるのが嬉しくてたまらない様子でした。——犬さんと一番仲のいいのは小型犬さんのいぬさんで、一番仲の悪かったのは、お香さんか知ら——」そんなことをツケツケ言います。